肯特之眼

間を、愉しむ。

以前、こんな話を聞いた。

宅配便が指定時間の2分前に届いたことに、クレームを入れた人がいる、と。

笑い話のようで、笑えなかった。

いつから、待つことがストレスになったのだろう。

荷物の現在地がリアルタイムでわかり、欲しいものはその日のうちに届く。便利になるたびに、私たちの「許容できる誤差」はどんどん小さくなっていく。

コントロールできることが増えるほど、コントロールできないことへの耐性が下がっていく。かつてストレスでもなかったことが、ストレスになる。

そしてもうひとつ、気になっていることがある。

欲しいものがその場で手に入るようになると、「欲しい」という気持ち自体が軽くなっていく気がする。
コスパ、タイパという言葉が示すように、ものの価値がどんどん効率に還元されていく。
気づけば、何を選んでも、どこか似たような選択に収斂されていく。

KAORUは、京都という街に根ざしている。

古いものと新しいものが自然に混在する、あの独特の空気の中で生まれたブランドだ。
流行を追わず、効率だけを求めず、本当に身につけたいものを作り続けることを大切にしてきた。

受注生産のアイテムは、お届けまでに時間がかかる。

でも、待つという行為の中に、実は豊かさが宿っていると思っている。

届くのを楽しみに待つ日々。
どんなコーディネートに合わせようかと考える時間。
ふと思い出す瞬間。
そういう「間」を愉しめる人は、ものとの関係が深い人だと思う。効率では測れないものの価値を知っている人だとも思う。

急かされず、流されず、自分のペースでジュエリーを選ぶ。

そういう時間の使い方が、その人自身をつくっていくのではないかと、密かに思っている。


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