Kent's eye

「クラフツマンシップ」が生み出す偶然性

KAORUはブランド発足以来、20年以上もの間、クリエイションの基本的な方法や本質は変えていない。当然、色々な方法に挑戦もしたし、失敗も繰り返してきたし、マイナーチェンジを幾重にも重ねてきた。一方で、自分たちが表現したいものを追求すると、結局同じような道筋に辿り着くことになる。

「クラフツマンシップ」の本質の一つに「偶然性」があると考えている。

文字通り「手」を使いながら創り上げていくと、クリエイション作業の中で、ちょっとしたズレが生じる。それは単純な手元のブレだったり、時には体調や気候によっても生じる。そして、そのちょっとしたズレは、当初イメージしていたものと似て非なるものが生み出される。大げさに言えば、その小さなズレが、クリエイターの想像範疇を大きく超えるものとなり、それが刺激や発見となって、結果として新しい作品が生み出される源泉となっていっても過言ではない。手から生み出された偶然性が私たちをその先に導いてくれる。

一方で、「効率」の実現は、自分たちが「こうなったらいいな、楽だな」というものを実現するために、色々な無駄な要素を削ぎ落して、必要なものだけを抽出していく作業のイメージだ。目指すべき「点」を設定し、それに大して最短で辿り着く。

どちらが良い悪いではない。

ただ、KAORUはその偶然性で生み出されるデザインを皆さんに体感してもらいたいという想いでこだわり続けている。

第五回へ続く